ゲームする期

ゲームに育てられた30代男性が、レビューを中心に書いています。

【コラム】「古い」はどこにいった?ノスタルジーの免罪符について

最近のゲームを見ていて少し思うことをダラダラと書いてみます。

 

 

僕のゲーム環境において、メインになっているのがニンテンドーswitchです。

このswitchを選ぶ大きなきっかけとなった一つには、インディゲームの充実が挙げられます。

インディゲームという括りも近年ではかなり一般的になってきて、毎週多くの作品がリリースされています。

 

 

実際のところ、「インディゲーム」を定義するのは難しいのですが、まぁとりあえず所謂メジャータイトルではないものを指していると思ってください。

 

で、毎週僕自身もストアにどんな新作が並ぶのかワクワクしながら見ているんですが、非常によく見かけるスタイルがあります。

・レトロ風2Dアクション

メトロイドヴァニア

ローグライクアクション

・独特の世界観

この辺です。ストアを検索すれば1ページにどれか1つは出てくると思います。

 

これらは大抵の場合が「80~90年代の名作をリスペクトして作られた」という説明文が付随してきます。

いや確かにそれらが素晴らしいゲーム体験だったのはよくわかるけど、同じインスパイア元に偏りすぎでは、と思うこともしばしば。ゼルダとかメトロイドとかマザーとかね。

 

こうした温故知新系のソフトが出てくるのは今に始まったことではありません。

インディゲーム界を押し上げるきっかけの一つになった「LIMBO」ですら、執筆現在から10年前の発売ですからね。

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「LIMBO」画像はPSストア公式より。THE独特な世界観。

 

僕は2010年当時、Xboxライブアーケードで発売直後にプレイしたのを覚えています。

そのころの印象は「懐かしくて、新しい」という、それ自体が新しい感覚でした。

当時はゲーム機がHD化した最中であり、洋ゲーを中心にすさまじいグラフィックの3Dソフトが席巻していた時期でもありました。

だからこそカウンターとして「2Dアクション」という「古さ」は、ある種のノスタルジーを持って受け入れられたのだと思います。

 

勿論制作環境の影響も大きいことでしょう。いわゆる大作を作るにはコストが大きくなりすぎ、同時に個々の制作環境が徐々に整備されていった時代です。アイディアを実現する上で低コストでも達成できる作風として2Dというのは理解できます。

 

その後の10年で、エンターテインメントの世界は大きく変わったと僕は思っています。

それはゲームのみならず、音楽や映像でも同じことが起こっています。

 

時代が並列になったのです。

過去に発表された作品の多くがアーカイブ化され、

いつでも誰でも簡単に安くアクセスすることが出来るようになりました。

特に音楽と映像なら定額制サービスを見れば顕著でしょう。

 

ゲームもこうしたアーカイブ化に加え、実況をはじめとした映像資料が簡単に発掘できます。

配信者は常に視聴者の意表をつくレトロ名作ゲームを捜しているのです。

 

そして現代の流行の一つとして、そうしたアーカイブをノスタルジーとして、新しい作品に取り入れていく傾向があります。

音楽ならフューチャーファンクとかローファイヒップホップ、ヴェイパーウエイブもそういえます。シティポップが世界的に流行したり。

映像分野でもコテコテのクロマキー合成を敢えて使う感じとか、同じですよね。

ゲームにおけるそれが、上述の2D作品群なのかなと思います。

 

こうした作品群に共通するのは、実際に原典を経験した人にとってはリバイバルであり、初めて触れる人にとっては「レトロ新しい」という点です。

「全く新しい」としないのは、自分の経験則で、新しいものには新しい匂いがするものなのです。感覚的な表現ですみません。

例えば、「矢羽根柄の袴」なんてどうでしょうか。僕は大正時代のことを全く理解していませんでしたが、これを初めて見た時に暖かく、かつ「自分にとって新しい」という感覚を持ちました。しかし時代に対して新しいものではないことはすぐにわかります。

 

そして、テクノロジー発展途上の初期に生まれたものすら、ノスタルジーの免罪符によって「味」と呼ばれるようになってきました。

例えばPS初期のローポリとよばれる3Dモデルです。

それらを再現したということで話題になったのが「Back in 1995」です。

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こちらもPSストアから。

 

思えば「ドット絵」も同じですね。今ではピクセルアートと名前を変え、立派な分野の一つとなっていますね。

今のところ流行の兆しはないローポリがそうなるとは考えづらいですが、「マインクラフト」なんかもローポリを逆手に取ったといえますね。

 

ただ、「80年代風」と実際の「80年代」の作品には結構な違いがあります。

昨今のゲームはリトライのポイントが多くあったり、オートセーブがついていたり、

イベントスキップがあったり、とにかく快適にプレイできることが重要です。

そういった親切さは実際の当時の作品では中々ないものです。

 

しかし、一方でフロムソフトウェアの「死にゲー」のように、

・難易度選択がない

・繰り返し失敗しながらプレイヤーが学ぶデザイン

という「不便さ」を面白さの基幹に埋め込んでいる作品も評価されています。

 

まぁこれは計算された不便さなので、本当に不便とも違うとは思いますが、

今後の最新ハードではロード時間が無くなるなんて話もあって、

「NOW LOADING」という文字列すらある種のノスタルジーを喚起するようになるかもしれません。

 

ノスタルジーが全てを赦すとき、ただ吐き捨てるだけの「古い」が無くなっていく可能性があり、逆に言えば「新しい」にチャレンジすることも相対的に減っていくことになります。

 

それでもテクノロジーが「新しい」を生み出すのか、

今後も革新的なアイディアは出てくるのか、

リバイバルする時代をずらしながら緩やかな変化になるのか、

実は今って物凄い時代の曲がり角だと思うんですよね。

 

今後もゲームの世界がどこへ向かうのか、とても楽しみです。

 

INSIDE LIMBO Double Pack (輸入版:北米) - PS4

INSIDE LIMBO Double Pack (輸入版:北米) - PS4

  • 発売日: 2017/09/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

Back In 1995

Back In 1995

  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: MP3 ダウンロード