【レビュー】Deadly Premonition 2(デッドリープリモニション2)【switch】
奇跡の続編!前作同様に人を選ぶが、妙に魅力的なアメリカ南部「ル・カレ」へようこそ!
怪作「レッドシーズプロファイル」から10年。まさかの続編は、「もはや安心感があるほど微妙なゲーム部」と「素晴らしい世界・物語」という、前作と同じ触感。しかし要素は結構変わったので、あとは好みかな。
筆者は前作クリア済みで大好き。PS2時代のアイレム作品に通じるところも感じる。
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正式タイトル:Deadly Premonition 2: A Blessing In Disguise
公式サイト:http://www.toybox-games.jp/dp2/
ジャンル:オープンワールド・ミステリー
発売日:2020年7月10日
プレイ時間:約30時間(ストーリークリア・サブクエちょっと)
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オープンワールド・ミステリー
本作はアメリカ南部の田舎町「ル・カレ」で起こった猟奇殺人事件を巡り、2005年と2019年の場面転換を繰り返しながら真相に近づいていきます。
2019年パートはほぼアドベンチャーゲームで、その時々に出てくるオブジェクトを選んで会話を進めるシステムになっており、ゲーム性はほとんどないと言っていいでしょう。
2019年パートの一幕。
2005年パートではFBI捜査官として実際に事件を追い、オープンワールドであるル・カレの街を自由に散策しながら捜査していきます。
ル・カレでは時間の進行もあり、店や住人はスケジュールに沿って行動・営業します。
また、深夜0時になるとモンスターが街中に出現し始めます。
2005年パートで中心となるのが、
①探索(移動)
②推理・捜査
③戦闘
の3つの要素です。
探索は一般的なオープンワールドと基本は同じです。ロケーションを好きな方法で巡ります。移動に使える乗り物はなんと「スケボー」。進行によりトリックを決めることも出来ます。
こういう細かいところに他のゲームと違った本作独自の魅力が散りばめられています。
同行する幼女「パティ」と会話しながら歩くのも本作の醍醐味です。尚、スケボー中も主人公のトークが聴けます。
殺人事件の解決が目的なので、捜査や推理を行うパートもあります。
しかし、こちらはかなり簡潔なものとなっており、ヒント(どころか答えそのものも)があるので、詰まるようなことはないでしょう。手応えなく感じる人もいるかもしれません。
相関図に情報をまとめるパート。時々3択の問題が提示されますが、普通に内容を追っていれば絶対間違えないレベルです。
オラクル(神託)の暗号を読み解くパート。リアルタイムで主人公がヒントを語りまくるので、しばらく見てればまずわかります。実のところ、一回も間違えなかったので、間違えるとどうなるのか確認出来ていませんw
事件現場を捜査するシーンも2019年同様にオブジェクトを調べるだけ。総当たりすれば必ず進行します。
戦闘はTPSスタイル。相手は町中を闊歩する野犬などの動物だったり、
毎日深夜0時から6時まで出現するモンスターだったりします。また、ゲーム進行には特定のダンジョンに入るのが必須なので、そこそこ戦闘パートはあります。
要素は盛沢山
オープンワールドということで、ミニゲームやサブクエストなどはそれなりに揃っていますし、そのチョイスがこのゲームの魅力でもあります。一部紹介しますと、
ボウリング。
水切り。・・・・水切り!?
そう、石を川に投げるあれです。テンポよくてついついやっちゃう魅力あり。
街を歩くと、頻繁にUFOと出くわします。撃ち落とすとアイテムが手に入ります。
サブクエストの一幕。いわゆるお使いミッションなんですけど、
こんな普通の川沿いに米!?
素材を集めて主人公の様々な能力を上げるアイテムを作る要素もあります。
素材は道端に落ちていたり、敵を倒すと手に入ったり様々で、種類も多め。
また、空腹度や睡眠不足などの管理系パラメーターや、
髭が伸びる、服が汚れるので衣装替えしてクリーニングに出すという生活要素もあります。
このゲームの魅力は「世界・キャラクター・ストーリー」と断言できる
ここまで、ゲーム的な要素の説明になっていましたが、ハッキリ書いておきます。このゲームの大きな魅力はそこではありません。スクリーンショットでも所々、隠しきれていない本当の魅力が出ています。
例えば「神託」だったり、能力強化画面のブードゥー(土着宗教)な雰囲気だったり。戦闘を含めてオカルトテイストは非常に強いです。
またはキャラクターのイカレた発言やデザインだったり。そもそも主人公がドギツイキャラです。
一方で抜けるような青空と閑散とした田舎町の雰囲気だったり。
このゲーム全体に纏った強烈な個性こそ、最大にして無二の魅力なんです。
念のため書いておきますが、喋ってるのは右のおばあちゃんです。
主人公モーガンの知的でシニカルなセリフや、妙なこだわりなど、本当に良いキャラしてます。
可愛い見た目に聡明な頭脳、そして物怖じしない強気な性格の相棒「パティ」。
本作で最も愛されるキャラクターの一人だと思います。ちなみにドラマCSIが大好き。
キャラクターの設定も沢山癖があるし、猟奇殺人から発展していくストーリーも驚きがあって面白いです。ここで語れないのが残念です。
問題点は数えたらキリがない
魅力的に構築されたこの世界に比べて、ゲームとしての出来は決して良くありません。
気になるところや不便なところは至るところにあり、
それが魅力的な世界を楽しむことを阻害するケースも多々あります。
特に気になったものを挙げていくと、
①ロード時間
本作は建物への出入り時にロードが入りますが、入るときに15秒、出るときには1分弱の読み込み時間があります。ファストトラベルにも20秒くらいかかり、どれも利用するのを避けたくなるほどです。
ちょっと繋がる問題として、本作は「建物の中では時間が経過しない」作りになっています(と思います)。で、キャラの行動は時間に沿っているので、
建物に入る→NPCが目的の行動をしていない→一旦外に出る→時間を進める→再度入る
こういう動きが必要になります。ちなみにアイテムのタバコを使うと時間を一気に進めることができるのですが、室内では使用不可でした。禁煙なんです。
この間に一々ロードが挟まるので、そりゃストレス溜まります。
ちなみにこれロード画面です。赤い葉が舞う演出はあるのですが、別に見ていられるタイプの画面ではないです。前作は一応アイテム紹介とかだったのに。
②フレームレート低下・処理落ち
これは発売後に少し話題にもなっていましたが、フィールド移動時、特にスケボーに乗ってる間はかなりフレームレートが落ちます。つまり画面がカクカクに動くようなイメージです。
これ自体は個人的にそんなに気にならなかったのですが、処理落ちして動きがスローになったり、ボタンに反応が無かったりすると途端に不愉快な気持ちになります。
尚、ゲームをスリーブにしながら長時間続けると悪化する傾向があり、一回ゲームを終了して再起動すると改善したことがありました。
アップデートで多少改善しているようですが、8/11現在ではまだまだあります。
③コンフィグまわり
これはある程度プレイヤーが限定されますが、個人的にめっちゃ痛かったことで、
「右スティックの視点移動が反転できない」のです。
下に入力すると上を向くという操作ができません。僕は普段からそうしたスタイルでプレイするので非常にとっつきづらかったです。
まぁある程度プレイすれば慣れるといえば慣れますが、今時その設定変更が出来ないのは余りに不親切と言わざるを得ないです。
コンフィグはこんな感じ。ボタン配置については別段困らなかったですが、個別に設定することはできません。
特に目立つ上記以外にも簡単に羅列すると、
・メインクエストがちょっとしたことでも「クリア」→「新規クエスト追加」を繰り返すのでテンポが悪い
・パワーアップ用のアイテム素材の内容と落ちてる場所に関連が薄いことが多く、どこで何が手に入るのかわからない
・サブクエストの発生条件やヒントがほとんどない
・敵キャラの種類が少なすぎる。ダンジョンもほぼ同じ。戦闘はほぼ単純作業。
・武器がピストルしかない。回復アイテムなどが大量に拾えるので緊張感なし。
・取得アイテムが表示されなくなったりキャラが埋まるバグは多数遭遇。
・移動中会話の種類が少ない上に、ちょっとしたことで途切れる。
・タイミングよくボタンを押すミニゲームが多いが、押した感覚と表示に大きな差がある。
・メインクエストはお使いばっかり。
・前作をプレイしていないとストーリーが一部わからない。
・グラフィックはPS3初期レベル。
こんなとこでしょうか。フレームレートなどの問題によって「全体的に手触りがよくない」という印象は持ちました。
ストーリーについても、基本的に面白いのですが、伏線が露骨だったり、逆に突拍子が無さすぎたりと若干気になるところがあったのも確かです。
細かな欠点に関しては慣れればなんてことはないんですが、上3つについてはこの作品の価値を明確に下げている非常に残念な部分といえます。
出来は良くないが可愛い子
前作に対する印象もこんな感じなんですけどね。本作も触感は同じだと思います。
舞台の変更によって雰囲気が大きく変わり、前作とはまた違ったストーリーが展開するのは好みの範疇ですが、
10年越しの続編で操作性や快適性に進歩が見られないのは率直に残念でした。
しかしそういう問題点を越えて、ル・カレに行きたいと思わせる魅力が確かにあります。ゲームが好きな人ほど、この歪な世界には開発者のセンスやこだわり・情熱を肌で感じ取ることができると思います。
例えば、PS2時代のアイレム作品(絶体絶命都市、バンピートロット、パチパラ)にハマった人ならわかるものがあると思います。
熱いものが心に残る作品だと思いますので、ぜひプレイしてみてほしいと思います。
また、ル・カレのカラっとした雰囲気と対照的な、山間の田舎町「グリーンベイル」を舞台にした前作も「Deadly Premonition Origins」として販売されています。
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000022469
ホラーに重きを置いたどんよりした雰囲気と、尖りまくったキャラクター達、素晴らしいストーリーを是非体験して欲しいと思います。僕も久しぶりにプレイします。
得点評価
客観的には75点、個人的には88点。